低分子化ヘミセルロース学術論文

低分子化ヘミセルロース学術論文(抜粋)

 

●25人のがん患者における低分子化ヘミセルロースのNK細胞免疫調整機能

(87th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research Washihbton,D.C. Aprill 20-24,1996)
 
[学会発表要約] 25人のがん患者に対して低分子化ヘミセルロースの免疫調整機能を調べた。

 
対象となったがん患者は、異なったタイプの進行した悪性腫瘍患者で、乳がん7人、前立腺がん7人、多発性骨髄腫5人、白血病2人、子宮頸がん2人、卵巣がん、横紋筋肉腫各1人。
 
すべての患者が通常のガン治療を受けながら、1日3gの低分子化ヘミセルロースを投与され、投与開始後2週間、3ヵ月、6ヵ月のNK細胞活性を調べた。
 
NK細胞活性はK562ガン細胞を標的とし、活性NK細胞対がん細胞比(E:T)=(12~100):1の条件でCr51遊離法で測定した。
 
その結果、NK細胞活性基礎値が低い患者について、低分子化ヘミセルロースを投与すると、NK細胞活性値が2週間後に著しく増加した。NK細胞活性の増加の割合は次のとおり。
 
 乳がん     154~332%
 前立腺がん   174~385%
 多発性骨髄腫  100~537%
 白血病     100~240%
 子宮頸がん   100~275%
 
NK細胞活性の強化は投与後3ヵ月、6ヵ月においても引きつづき、観察された。25人中3人に効果がなかった。
 
[結果] この研究結果は次のことを示している。
 
①がん患者の大多数はNK細胞活性基礎値が低い。
②低分子化ヘミセルロース投与により投与2週間後にNK細胞活性値が著しく増加した。
③NK細胞活性の強化は投与後3ヵ月、6ヵ月においても引きつづき、観察された。
④低分子化ヘミセルロースによるNK細胞活性の強化メカニズムはNK細胞の顆粒の増加に関与する。
 
[結論] 私たちは、低分子化ヘミセルロースは投与2週間後に、ヒトNK細胞活性を高度に上昇させることが明らかにされたことから、有望なBRMであると結論する。低分子化ヘミセルロースによるNK細胞活性の誘導は、従来のガン治療に対する新しい免疫療法のアプローチを象徴するものである。
 
 

●試験管内における低分子化ヘミセルロースのヒトNK細胞に対する効果およびインターフェロンγの合成

(Federation Association, Society of Experimental Biology, New Orleans, June 2-6,1996)
 
[学会発表要約] 私たちはこの研究で、低分子化ヘミセルロースのNK細胞活性に対する効果、および末梢血液中の単核細胞(MNC)によるインターフェロンγの合成について調べた。
 
MNCは健康体のヒトの末梢血液から採取され、異なった濃度に調整された低分子化ヘミセルロースとともに16時間培養された。
 
NK細胞の活性はK562ガン細胞を標的細胞とし、4時間のCr51遊離法によって測定された。NK細胞活性は0~100μg/mlの異なった低分子化ヘミセルロース濃度で有意に変化(2~5倍)した。低分子化ヘミセルロースによるNK細胞活性の強化メカニズムを調べるために、私たちはMNCによるインターフェロンγの産生に対する低分子化ヘミセルロースの影響について調査した。
 
低分子化ヘミセルロースと単核細胞を培養した培養液の上澄みを集め、EL-SA法によりインターフェロンγの合成について分析した結果、インターフェロンγの産生が10倍以上に増加していた。
 
[結果]この研究結果は次のことを示している。
 
①低分子化ヘミセルロースは投与16時間後に、ヒトNK細胞活性を強く上昇させることが明らかにされたことから、有望なBRMである。
②試験管内における以前の研究では、低分子化ヘミセルロース投与2週間後に、ヒトNK細胞活性の有意な上昇が認められている。
③低分子化ヘミセルロースのNK細胞活性のメカニズムはインターフェロンγの誘導を通して行われる。
 

米国カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校
UCLA/DREW医科大学
免疫学教授 マンドゥ・ゴーナム博士
医療機関専用BRM-ARABIX for Medical Doctors

<学術論文>
発酵脱脂米糠抽出物の免疫賦活作用

 

Activation of Immune Functions by the Extract of Fermented and Defatted Rice Bran
 
Tsutomu Arimura, Tomoko Sugishita, Tadashi Okada and Akiko Kojima-Yuasa
 
Graduate School of Human Life Science, Osaka City University
Research and Development Department, Oryza Oil & Fat Chemical Co., Ltd.
 
大阪市立大学大学院生活科学研究科
オリザ油化株式会社研究開発部
 
 

Summary

 
We studied the eff ect of an extract of fermented and defatted rice bran on some immune functions in vitro. Phagocytotic activity on latex beads by Kupffer cells and cytotoxic activity of large granular lymphocytes(LGL) were  stimulated by the addition of rice bran extract, indicating that the extract causes the activation of immune functions. The most stimulation of phagocytotic activity was by the extract of rice bran fermented for 3 days at  37 ℃ . It was also determined that the eff ective component in the extract is a non-protein substance( more than 12 kDa), which is stable under  boiling or in acid or alkaline pH. Furthermore, the acute toxicity was examined  in vivo and we found that the extract was safe for rats. These  results suggest that the extract of fermented and defatted rice bran could be  a useful food material for activation of immune functions.
 
Keywords:発酵脱脂米糠抽出物 The extract of fermented- and defatted-rice bran, 免疫賦活作用 Activation of immune functions,コウジ菌KBN943株 Aspergillus oryzae KBN943, Kupff er 細胞 Kupffer cells,大顆粒リンパ球 Large granular lymphocyte(LGL), 貪食能 Phagocytotic activity,ナチュラルキラー活性 NK activity.
 

Ⅰ.緒言

 
様々な食糧資源の中で,米は古くから小麦とともに最も多く栽培され、食用に供されている。また、米油は唯一の国産油脂資源であり、同様に食用に供されている。
 
精白米は玄米から種皮を除去した胚乳の部分を示すが、この玄米からの精米過程で生ずる米糠は、我が国における米の年間消費量( 1000万トン) の約10%にあたる100万トンに達しており、米糠の有効利用が必要とされる。米糠の有効利用についての研究は数多く報告されており、すでにγ-オリザノール、トコトリエノール、セラミド、スクワランなどの非極性成分は、付加価値の高い医薬品、機能性食品、一般食品および化粧品などに利用されている。しかし,非極性成分を取り除いた脱脂米糠は、付加価値の低い肥料や飼料などに利用されているのみである。近年、脱脂米糠中の極性成分であるタンパク質複合体およびフェノール類が抗酸化性を有し2 ) 3 )、さらに脱脂米糠を発酵処理することによってその抗酸化性は著しく亢進することが明らかにされている4 ) 。また、発酵ウコンなどの発酵食品は、発酵することによって嗜好性がよくなり、抗酸化機能を有することが報告されている5 ) 。
 
肝臓は栄養素の代謝、解毒作用、胆汁の生成など生体内で最も重要な代謝の中心をなす臓器である。門脈の支流である肝類洞内に存在するKupffer 細胞は、細菌やエンドトキシンなどの門脈血液中の異物を捕捉し、生体防御に重要な働きをしている6 )。同様に肝類洞内に存在するpit 細胞は、ナチュラルキラー( NK ) 細胞である7 )。pit 細胞は形態学的にはlarge granular lymphocytes( LGL ) であり、Kupffer 細胞とともに肝臓の防御系を構成し、ガン細胞の肝臓への転移を抑制するなどの機能を有することが知られている8 ) 。これらの免疫担当細胞の機能亢進が、健康増進と深く関係することが示唆されるが、食事成分との関わりはいまだ明らかにされていない。
 
そこで本研究では、未利用資源である脱脂米糠を健康増進に有効な食品素材として利用するために、脱脂米糠を発酵して得られた抽出物の免疫賦活作用について検討した。
 

Ⅱ.実験方法

 

1  実験材料


( 1 ) 発酵脱脂米糠抽出物
 
発酵脱脂米糠抽出物はオリザ油化株式会社より提供されたものを用いた。
 
①脱脂米糠の発酵処理
 
米糠( 1 kg ) に対して5 倍量のヘキサンを加え, 2時間加熱し,油分が2 % 以下になるまで脱脂を行った。濾過により残渣と抽出液に分離し,得られた残渣を90~ 100℃で40分間乾燥後,粉砕したものを発酵用脱脂米糠(以下,脱脂米糠)とした。さらに脱脂米糠 ( 150g )に対して150 mlの水を加え混合した後,オートクレーブを用いて滅菌した。放冷後,米糠の抗酸化性を亢進させる作用を有するコウジ菌Aspergillus oryzae KBN943株4 )( 株式会社ビオック製) 60mgを均一に播種し,発酵処理を行った。 発酵処理は30℃または37℃,湿度90% の条件で0 ~ 6 日間行った。
 
②抽出処理
 
発酵脱脂米糠に対して10倍量の50%エタノールを加え, 2 時間加熱還流し抽出を行った。濾過により残渣と抽出液に分離し,抽出液の溶媒を除去したものを発酵脱脂米糠抽出物とした。
 

2  免疫賦活活性の測定

 
感染予防効果を検討するためにマクロファージの異物貪食能を,抗ガン効果の検討にはNK 活性を測定した9 ) 10 ) 。
 
①感染予防効果の検討
 
マクロファージは,体内に侵入した病原菌やウィルスなどの異物を捕捉( 貪食作用) し,無毒化することによって,感染に対する防御の役割を果たしている7 , 8 ) 。本研究では,マクロファージによるラテックス粒子貪食能を測定することによって,感染予防効果を検討した11 ) 。
 
マクロファージとして,肝臓に常在し生体内のマクロファージの80~90%を占めるKupffer 細胞を用いた7 , 8 )。Kupffer 細胞は,12~14週齢Wistar 系雄性ラットの肝臓をコラゲナーゼ液で灌流した後,エルトリエーション・ローターシステムによって分離した12 ) 。分離したKupffer 細胞は10% FBS を含むRPMI1640培地に浮遊させ,直径35mm プラスティックシャーレに5.0 x 105個/ml になるように調整し, 5 % CO 2 インキュベーター内で37℃,24時間培養した。次に,GdCl 3 ・6 H 2 O がKupffer 細胞の貪食能を低下させることが知られているので13 ) ,培地にGdCl 3 ・6 H 2 O を0.10 ng/ml 添加して1 時間培養した後,発酵処理条件の異なる発酵脱脂米糠抽出物をそれぞ
れ200 μg/ml 添加した10% FBS を含むRPMI 1640培地に交換した後, 2 時間培養した。さらにPBS で10倍希釈したラテックス粒子( φ=0.8 μm ) 1.25 l/ml を培地に添加して5 % CO 2 インキュベーター内で1 時間貪食させた後,位相差顕微鏡下で細胞1 個あたりの貪食されたラテックス粒子数を計測し, 1 シャーレにつき50細胞の平均値を求めた。また,抽出物無添加群をControl群とした。
 
②抗ガン効果の検討
 
NK 細胞は活性化することによってガン細胞,病原菌やウィルスに感染した細胞などを攻撃し,細胞膜を破壊することによって死滅させる9 ) 10 ) 。
 
本研究では,肝臓に常在し他のNK 細胞と比較してNK 活性が高いLGL を用いた7 -14 ) 。LGL は12~14週齢Wistar 系雄性ラットの肝臓をPBS による高圧灌流法によって分離した後,ナイロンファイバーカラムを用いて精製した15 ) 。分離したLGL は10% FBS を含むRPMI1640培地に浮遊させ,直径35 mmプラスティックシャーレに1.0 x 106個/mlになるように調整した。LGLに脱脂米糠抽出物または発酵脱脂米糠抽出物をそれぞれ200 μg/ml 添加した後, 5 % CO 2 インキュベーター内で37℃,24時間培養した。次に標的ガン細胞としてマウスリンパ腫細胞( YAC-1 ) を用いて,LGL とYAC- 1 細胞の混合培養( LGL:YAC-1 細胞=10: 1 ) を行い,YAC-1 細胞に対する細胞傷害活性を培養液中に漏出したLDH ( 乳酸脱水素酵素) 活性を測定することによって求めた16-19 ) 。
 
すべてのYAC-1 細胞が死滅した際のLDH 活性を100%としNK 活性として表した。
 

3  活性成分の検討

 
脱脂米糠抽出物または発酵脱脂米糠抽出物を50%エタノールに溶解後,蒸留水中で4 ℃,24時間攪拌させながら透析を行うことによって,12 kDa 以上の高分子画分を分離した。さらに高分子画分を30分間煮沸処理することによって,タンパク質成分の不活性化を行い,非タンパク質高分子画分を得た。
 
免疫賦活活性の評価は,Kupffer 細胞の貪食能を測定
することによって検討した。
 

4  有意差検定

 
有意差検定には分散分析およびポストホックテストとしてFisher のPLSD 法を使用し,有意水準は5 %とした。また,同一のアルファベット表示は各群間に有意差がないことを示す。
 
 

Ⅲ.実験結果

 

1  免疫賦活活性評価

 
①ラテックス粒子貪食能の検討
 
30℃または37℃の発酵条件で0 ~ 6 日間発酵処理を行った脱脂米糠の抽出物におけるKupffer 細胞の貪食能を検討した。その結果,Control 群ではGdCl 3 ・6 H 2 O処理によってKupffer 細胞の貪食能は低下したままであったが,発酵処理を行っていない脱脂米糠抽出物(発酵0 日目)群ではGdCl 3 ・6 H 2 O 処理によって低下した貪食能は有意に亢進した。脱脂米糠を37℃で発酵処理すると,Kupffer 細胞の貪食能はさらに上昇し, 3 日間発酵処理した脱脂米糠抽出物を添加した群では,貪食能は最も高い値を示した。しかし,その後発酵処理日数が増えるにつれて貪食能は低下し,発酵6 日目では,未発酵のものとほぼ同程度にまで貪食能は低下した( Fig.1 ) 。
 

脱脂米糠抽出物の発酵日数による Kupff er 細胞の貪食能の変化 (37℃ )

 
一方,30℃で脱脂米糠を発酵させると,Kupffer 細胞の貪食能は発酵処理日数の違いにかかわらずほとんど変化しなかった( Fig.2 ) 。
 

脱脂米糠抽出物の発酵日数による Kupff er 細胞の貪食能の変化 (30℃ )

 
これらの結果より,Kupffer 細胞のラテックス粒子貪食能に対する賦活作用を顕著に亢進させたものは,37℃で3 日間発酵させた脱脂米糠抽出物であることが明らかとなったので,以下の実験には,発酵条件を37℃, 3 日間とした脱脂米糠抽出物を用いた。また,この条件で処理したものを発酵脱脂米糠抽出物とした。
 
 
②抗ガン効果の検討
 
LGL の標的ガン細胞( YAC-1 ) に対するNK 活性( 細胞傷害活性) が発酵脱脂米糠抽出物の添加によって影響されるかを検討した。その結果,発酵処理を行っていない脱脂米糠抽出物を添加することによって,NK活性はControl 群と比較して有意に上昇した。次に,発酵処理を行った脱脂米糠抽出物を添加すると,LGL のNK 活性は顕著に上昇した( Fig.3 ) 。
 

発酵による脱脂米糠抽出物の LGL のNK 活性の変化

 
 
これらの結果から,脱脂米糠抽出物は発酵処理を行うことによってNK 活性を有意に亢進することが示唆された。
 
 

2  活性成分の解析

 
発酵脱脂米糠抽出物の活性成分がどのような物質であるかを解析するために,抽出物を透析することによって12kDa 以上の高分子画分を得た。この高分子画分におけるKupffer 細胞の貪食能について検討した。Fig.4に示すように,透析前の発酵脱脂米糠抽出物とその高分子画分における貪食能には有意差が認められなかった。このことから,発酵脱脂米糠抽出物の活性成分は12kDa 以上の
高分子画分に存在することが明らかとなった。
 
さらに,発酵脱脂米糠抽出物の活性成分が分子量12kDa 以上のタンパク質性の成分であるかを確認するために,高分子画分を加熱処理することによってタンパク質成分を不活性化させたときのKupffer 細胞のラテックス粒子貪食能を検討した。その結果,熱処理高分子画分における貪食能は高分子画分と同じレベルであった( Fig.4 ) 。このことから,発酵脱脂米糠抽出物の活性成分は分子量12 kDa 以上の非タンパク質性物質であることが示唆された。
 

脱脂米糠抽出物の 熱処理高分子画分の貪食能
 

 

3  安定性評価

 
①熱安定性試験
 
発酵脱脂米糠抽出物を30~60分間100℃または120℃の温度条件で加熱処理をし,Kupffer 細胞のラテックス粒子貪食能を測定した。加熱処理前の貪食能を100%とすると,120℃で60分間加熱処理した場合でも貪食能は89.5%となり,加熱処理に対する免疫賦活活性は,ほぼ安定であることが明らかとなった( Fig.5 ) 。
 

発酵脱脂米糠抽出物の熱安定性

 

② pH 安定性試験
 
発酵脱脂米糠抽出物を50%エタノールに溶解した後,pH を調整して24時間静値した後 Kupffer 細胞に添加し,ラテックス粒子貪食能を測定した。pH 調整前の貪食能を100%とすると,pH 3 ~ 9 では80%以上,pH11に調整した場合でも73.5%の貪食能を維持し,pH の変化に対してもほぼ安定であることが示された( Fig. 6 ) 。
 

発酵脱脂米糠抽出物のPH安定性

 
 

4  安全性評価

 
発酵脱脂米糠抽出物の安全性を確認するために,急性毒性試験を行った。体重30 g 前後, 5 週齢のICR 系雄性マウス24匹を12匹ずつ2 群に分け,投与群には発酵脱脂米糠抽出物5 g/kg 体重を胃チューブを用いて経口投与し,Control 群には蒸留水を同様に投与した。動物飼育室にて餌と飲水を自由摂取の条件下で14日間飼育し,体重増加および毒性症状を観察し,観察期間終了後に解剖を行った。その結果,発酵脱脂米糠抽出物投与群における体重変化は,Control 群と比較して異常は認められなかった。また,肉眼的観察による各臓器の異常は認められなかった( データ省略) 。
 
 

Ⅳ.考察

 
単球,組織マクロファージは貪食能,免疫調節作用,生理活性物質の産生といった多くの機能を有するとされている。生体防御機構の中心的役割を担う網内系機能は肝臓の組織マクロファージであるKupffer 細胞の貪食能に依存していることが大きいと考えられる20 ) 。
 
また,Kupffer 細胞とともに肝局所に存在するLGL の本態はNK 細胞である。正常肝においてNK 活性は極めて低いが,Biological Response Modifififi er ( BRM ) の投与によって肝NK 活性は上昇し21 ) ,肝臓への実験的腫瘍転移が抑制されることから22 ) ,LGL もKupffer 細胞とともに肝臓における防御系の重要な構成要素を形成していると考えられている。
 
肝臓病の終末像である肝硬変では,全身性の免疫能の低下とともに局所的にはKupffer 細胞数の減少,Kupffer細胞の機能低下が認められている23 ) 。さらに慢性アルコール投与ラットから分離したKupffer 細胞の貪食能は,正常ラットから分離したKupffer 細胞に比べて有意に低下すること24 ) や,正常Kupffer 細胞の培地中にエタノールやアセトアルデヒドを添加することによってKupffer細胞の貪食能は顕著に低下するが,培地中からエタノールやアセトアルデヒドを除去することによってKupffer細胞の貪食能は改善されること24 ) から,生体防御機構には健康状態と深く関係があることが示唆される。ところがKupffer 細胞やLGL は生理的条件下では免疫学的活性が弱いとする報告もある。そのため,我々が日常に摂取することの可能な食事因子から免疫賦活作用を有するものを見出すことは,生活習慣病の予防や高齢化社会においての健康維持に非常に重要であると考えられる。
 
そこで本研究では,脱脂米糠を発酵処理することによって得られた発酵脱脂米糠抽出物の免疫賦活作用を検討した。

脱脂米糠の発酵処理に用いたコウジ菌はいわゆる「カビ」に属し,清酒,味噌,醤油などわが国の発酵食品に不可欠な微生物である。本研究では,脱脂米糠をコウジ菌Aspergillus oryzae KBN 943株を用いて発酵処理を行い,さらに50%エタノールによって抽出し,得られた抽出物のラテックス粒子貪食能および抗ガン効果を検討した。
 
脱脂米糠の発酵条件の検討は,Kupffer 細胞のラテックス粒子貪食能を測定した。その結果,30℃の温度条件で発酵させた脱脂米糠におけるKupffer 細胞の貪食能はControl 群と同レベルを示したが,37℃の温度条件で3日間発酵させた脱脂米糠ではKupffer 細胞の貪食能が顕著に亢進したため,これを発酵脱脂米糠抽出物とした。
 
また,抗ガン効果の評価としてLGL のNK 活性を検討した結果,発酵脱脂米糠抽出物がNK 活性を亢進させることが認められた。すなわち,脱脂米糠はコウジ菌発酵により,自然免疫に対する賦活作用を亢進することが明らかとなった。また予備実験として行ったin vivo 系での免疫賦活活性を測定したところ,発酵脱脂米糠抽出物はKupffer 細胞の貪食能やLGL のNK 活性を亢進させる傾向を示した(データ未発表)。このことは食品素材として摂取した際にも感染予防効果や抗ガン効果が期待できる可能性を示唆するものであるが,これについてはさらなる検討が必要である。
 
次に,発酵脱脂米糠抽出物における免疫賦活活性成分の解析を行った。発酵脱脂米糠抽出物を透析処理することによって得られた分子量12 kDa 以上の画分における免疫賦活活性をKupffer 細胞のラテックス粒子貪食能によって検討した結果,透析前の発酵脱脂米糠抽出物と同レベルの貪食能の亢進が認められた。さらに,透析後煮沸処理によってタンパク質を熱変性させた場合でも,Kupffer 細胞の貪食能の亢進が認められた。これらの結果から,発酵脱脂米糠抽出物の活性成分は,分子量12kDa 以上の非タンパク質成分であることが示唆された。
 
 

Ⅴ.要約

 
本研究において,脱脂米糠をコウジ菌( Aspergillusoryzae KBN 943株) を用いて発酵処理することによって得られた発酵脱脂米糠抽出物の自然免疫賦活作用を検討した。
 
1 ) 発酵脱脂米糠抽出物はKupffer 細胞のラテックス貪食能,LGL のNK 活性を亢進させたことから,感染予防効果および抗ガン効果などの自然免疫系の賦活活性を有することが明らかとなった。また,最も効果を示した発酵条件は37℃, 3 日間発酵処理した場合であった。

2 ) 発酵脱脂米糠抽出物の活性成分は分子量約12 kDa以上の非タンパク質成分であることが示唆された。
 
3 ) 熱やpH に対する安定性および安全性について検討した結果,発酵脱脂米糠抽出物の安定性と安全性は高いことが示された。
 
 

Ⅵ.謝辞

 
本研究は社団法人食品需給研究センターの平成13年度健康増進機能性食品素材の高度加工・利用技術の開発事業補助金によって実施されましたことを記して,謝意を表します。
 
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発酵脱脂米糠抽出物の免疫賦活作用

 
有村 勉、杉下 朋子*、岡田 忠司*、湯浅(小島) 明子
 
要旨:脱脂米糠をコウジ菌(Aspergillus oryzae KBN 943株)を用いて発酵処理することによって得られた発酵脱脂米糠抽出物の免疫賦活作用を検討した。発酵脱脂米糠抽出物はKupffer 細胞のラテックス粒子貪食能およびLGL のNK 活性を亢進させたことから,感染予防効果や抗ガン効果などの自然免疫系の賦活活性を有することが明らかとなった。また,発酵時の温度条件として37℃,3 日間発酵処理した場合の脱脂米糠抽出物において,最も顕著なラテックス粒子貪食能を有することが示された。一方,発酵脱脂米糠抽出物の活性成分は分子量約12 kDa 以上の非タンパク質成分であることが示唆された。さらに熱やpH に対する安定性および安全性について検討した結果,発酵脱脂米糠抽出物の安定性と安全性は高いことが示された。
 


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