低分子化ヘミセルロースの歴史

各種のヘミセルロース誘導体について

 

①シイタケ菌糸体抽出物(LEM)~第1世代
 
ヘミセルロース誘導体の最初の製品がシイタケ菌糸体抽出物(LEM)です。LEMはサトウキビバガスと米糠でシイタケ菌を培養し、約6ヶ月程度培養した培養基から水溶性成分を抽出したものです。シイタケ成分、代謝生産物、培地成分の分解物等の混合物です。
 
○有効性と有効成分へのアプローチ
 
当時この分野での研究の中心は、シイタケ由来の多糖β-1・3グルカンに関するものでした。β-1・3グルカンの免疫強化作用、即ちマクロファージの活性化は千原吾郎博士の論文(Nature(Lond),222:687,1969)で学術的に裏付けされ、免疫強化剤レンチナンが開発されていました。LEMも類似の作用が考えられることから、研究が開始されました。
 
菅野延彦教授(富山医科薬科大学名誉教授)の研究では、先ずLEM全体での生理活性物質として、マクロファージの活性化と癌細胞増殖抑制作用を確認し、その活性を指標として有効成分の分画を行いました。その結果、高分子画分(LAP-1)とやや低分子画分(LAP-2)に活性を認めました。LAP-1は多糖でLAP-2は糖たんぱくであり、糖の部分はいずれもアラビノース、キシロースを主な構成糖とするヘテログリカンでした。その組成から植物由来の食物繊維由来であろうと推測されました。(Anticarcinogenic Actions of Water-Soluble and Alcohol insoluble fractions from culture Medium of Lentinus edodes Mycelia : N.Sugano, Y.Hibino, Y.Choji and H.Maeda, Cancer Letters17(1982)109-114)
 
そしてLAP-1経口投与によるラットに対する3`‐Me-DAB誘発肝癌発癌に対する抑制作用を確認しました。(Anticarcinogenic Actions of an Alcohol-insoluble fraction(LAP-1) from culture Medium of Lentinus edodes Mycelia : N.Sugano, Y.Choji, Y.Hibino, and H.Maeda, Cancer Letters27(1985)1-6)
 
○臨床的効果の確認
 
1980年代、B型ウィルス性肝炎のワクチンは存在せず、国民病の一つとして、その治療薬の開発が望まれていました。そこでLEMは健康食品ではありますが、基本的に免疫調整作用を有し、B型肝炎に対する民間での効果が数多く認められていたことから、東京大学第一内科グループを中心にLEM研究会が組織され16施設で多施設間Open studyによる治療効果の検討が行われ有効性と安全性が示唆されました。
 
○高分子多糖(LAP)の吸収性について
 
高分子多糖BRMの経口投与における吸収率の向上に関する研究をされていた富山医科薬科大学(現富山大学)医学部の田澤賢次先生(現富山医科薬科大学名誉教授)はテクネシウムラベルによるLAPの吸収と臓器分布を証明しました。LAPは低い率ではありますが、経口摂取により腸管吸収され、全ての臓器に分布することが確認されました。そして中鎖脂肪とエマルジョン化することにより、さらに吸収率が高まり、特に肝臓への分布量は20倍に増加することも確認されました。

 
 
②AHCC~第2世代
 
次に製品化されたヘミセルロース誘導体がAHCCです。AHCCのヘミセルロースは米糠に由来しています。ヘミセルロースが豊富な米糠培養液でシイタケ菌糸を培養することによって得られた培養濾液を凍結乾燥したものです。ヘミセルロースは原則的には不溶性です。米ぬかを温水抽出し粗濾化した懸濁液を主な炭素源としシイタケ(担子菌)の成育因子を加え、やや低温で好気下で培養します。キノコの菌糸には細胞外に複数の炭水化物分解酵素や繊維素分解酵素等を分泌します。要するに木質を溶かして単糖にして炭素源として使うための酵素を豊富に分泌します。この生物反応を資化と称しています。シイタケ菌糸体抽出物(LEM)とAHCCの製法の違いは固体培養と液体培養の違いです。またヘミセルロースの原料の由来もLEMがサトウキビと米糠で、AHCCは米糠となっています。
 
○品質の安定
 
AHCCは培養タンクを用いる液体培養によって生産されています。液体培養の長所は一定条件のもとに培養されることです。キノコ菌糸の液体培養は乳酸菌や酵母等に比べて培養日数も長く技術的には決してやさしくはありません。またスケールアップし、大量培養をする際にも大きな困難がつきまといます。しかし培養物は安定的に一定の内容の成分で生産できますので微生物を用いた機能性成分の生産には適した製法です。
 
○有効性
 
AHCCの有効性については多くの報告があります。
 
基礎的な生理作用については肝保護作用、糖尿病発症予防作用、感染症抵抗性、ストレス抵抗性、抗癌作用等生体防御作用についての有効性を示唆する広範囲な研究結果が報告されています。
 
・Protective Effects of Active Hexsose Correlated Compound (AHCC) on the Onset of Diabetes Induced by Streptozotocin in the Rat : Koji Wakame, Biomedical Research 20(3)145-152,(1999)
・Beneficial Effects of Active Hexose Correlated Compound (AHCC) on Immobilization Stress in the Rat: Shuyi Wang等, Dokkyo J. Med. Sci., 28(1), 559-565, 2001.
・Combination therapy of Active Hexose Correlated Compound Plus UFT Significantly Reduces the Metastasis of Rat Mammary Adenocarcinoma: Anti-Cancer Drugs, 9, 343-350,1998.
 
また、臨床的効果の有用性を示す報告もあります。担癌患者38名に対する6ヶ月間の継続接種により、免疫応答の改善を認め、癌治療における治癒力の向上が期待できることが報告されています。
 
そして肝癌手術後の患者269名に対する10年間の追跡調査も行われています。
 
健康食品の癌治療における補完作用について疫学的アプローチがなされ有意差が認められた報告は少なく、本研究は健康食品の有用性が評価される貴重な論文の一つであると思います。
 
・Improved prognosis of postoperative hepatocellular carcinoma patients when treated with functional foods: a prospective cohort study. : Y Matsui, J Uhara, S Satoi, m Kaibori, H Yamada, H Kitade, A Imamura, S Takai, Y Kawaguchi, A-Hon Kwon, Y Kamiyama, Journal of Hepatology, 37, 78-86 (2002)

 
 
③米糠アラビノキシラン誘導体(MGN-3)~第3世代
 
AHCCと似た製造法で作られたヘミセルロース誘導体が米糠アラビノキシラン誘導体(MGN-3)です。MGN-3は米糠の温水懸濁液をシイタケ菌糸が産出する炭水化物分解酵素複合体で加水分解したものです。加水分解によって米糠のヘミセルロースは一部水溶化されると同時に低分子化されます。これらはアラビノキシラン、アラビナン、キシラン等五炭糖を主な構成糖とする多糖の集合体です。
 
これらの糖鎖を有する成分がナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化し、免疫システムを健康に維持します。MGN-3はシイタケ菌糸を培養しヘミセルロースを資化させることなく、酵素反応によってヘミセルロースを活性化していることが特徴です。この製法によってヘミセルロース誘導体の生成効率が向上しました。
 
○MGN-3の腸管吸収について
 
シイタケ菌糸体抽出物(LEM)の項においてLEMのヘミセルロース誘導体の腸管吸収をアイソトープのラベルによりラットを用いて確認しています。MGN-3についても腸管吸収に関する報告がありますので紹介します。
 
・Modified Arabinoxylan from Rice Bran (BioBran/MGN‐3) Beneficial for Weight Loss of Mice as a Major and Acute Adverse Effect of Cisplatin: Yuzo Endo and Hiroshi Kanbayashi,  Pharmacology & Toxicology, vol.92, 300-303. 2003.
 
シスプラチンの副作用によるマウスの体重減とその関連についてのMGN-3の保護作用を経口投与と腹腔内投与の2経路で検討し、いずれの投与経路においてもほぼ同様の効果が得られています。

 
○臨床試験について
 
米糠アラビノキシラン誘導体の免疫賦活作用を証明するために高齢者を対象に風邪というイベントを介して、その有効性を検討しました。この試験には神戸市で整形外科を開業されている市橋研一先生に多大なるご協力を頂いたものです。市橋先生はクリニックとは別に介護老人保健施設を経営されており、ボランティアはその施設の入所者で同意を得られた高齢者(平均年齢84才)50人を対象としました。群は25名ずつ2群とし、二重盲検法で(実サンプル3ヶ月 対照サンプル(プラセーボ)3ヶ月 冷却期間1ヶ月 合計7ヶ月)行いました。プロトコールに従って試験は完了しました。結果は明らかに風邪の症状の軽減、罹患期間の短縮等、高齢者の風邪による体力の低下の軽減効果を示唆するものでした。健康食品を用いた二重盲検試験は海外ではよく見られますが、国内で疾病を絡めたこの種の試験は稀なケースです。
 
・The Oral Administration of the modified Arabinoxylan From Rice Bran (HRB) Prevents a Common Cold Syndrome in Elderly People Based on Immunomodulatory Function: K. Tazawa, K. Ichihashi, K. Omura, M. Anazawa, H. Maeda, Journal of Traditional Medicines, Vol. 20(30)132-141, 2003
 
 
④発酵古代米~第4世代
 
古代米の米糠を使ってヘミセルロース誘導体を生成したものが発酵古代米です。発酵古代米は古代米の一種である紫黒米のヘミセルロースをTrichoderma 由来セルラーゼ製剤を用いて加水分解したものです。さらに酵母を用いて発酵させることにより、グルコースが消費され、副産物として発酵中に産生されるガンマアミノ酪酸(GABA)や紫黒米の表皮中に存在するポリフェノールの一種であるアントシアニン(アントシアニングルコシド)が抽出されます。GABAは精神安定作用、アントシアニンは抗酸化作用が報告されています。
 
○弘前大学との共同研究
 
弘前大学名誉教授の加藤陽治先生は糖質の研究についての日本の代表的な研究者の一人です。加藤先生のグループの研究の一つとして紫黒米を用いたGABAを豊富に含有する食品の製造方法に関するものがあり、特許になっていました。発酵古代米の基本的な製造方法はそのパテントに基づくものです。
 
○発酵古代米の生理活性に関する基礎研究
 
発酵古代米の生理活性は多方面から検討されています。マクロファージ活性、ナチュラルキラー活性、抗腫瘍活性、抗酸化作用、抗ストレス作用等について期待されています。
 
・The peculiarity of fermented ancient rice and possibility to application as the functional food: H. Maeda, S. Ito, T. Miura, Y. Kato, The Japanese Academy for Clinical Complementary and Alternative Medicine (2006)
 
○臨床試験について
 
発酵古代米の癌の治療の補助作用については米ぬかアラビノキシラン誘導体(MGN-3)と同一試験を行い、その作用性を検討しております。発酵古代米はin vitro試験でMGN-3同様の有効性が示唆されています。ガンマアミノ酪酸とアントシアニンが生成されることから、発酵古代米が期待される場面は高齢者の生活の質(QOL)の改善であると考えています。
 
そこで重篤な基礎疾患を持たず、通常の生活を維持している高齢者(平均年齢72歳)で生活習慣病の治療で通院している患者を対象として発酵古代米によるQOLの状態を確認する目的でケーススタディを行いました。試験期間は3ヶ月でQOLに関するアンケート調査と免疫パラメータの測定および血清の生化学的検査を行いました。結果は睡眠、食欲、体調等のQOLの改善傾向が認められ、免疫システムの調整作用が示唆されるデータも得られています。
 
・The Safety and QOL improvement Effects of the Oral Administration of the Fermented Oryza Sativa subsp japonica in Elderly People: S Hirose, K. Omura, N. Shiraishi, H. Maeda, Geriatric Medicine 45(11);1469~1475,2007

 
 
⑤ARABIX(米胚芽・米糠発酵抽出物)~最新免疫賦活物質BRM
 
これまでは、いかにヘミセルロース誘導体を効率的に生成するかが着目点でしたが、三次機能研究の進展から他にも米糠に由来する機能性成分が明らかになってきました。米糠及び米胚芽に関する長年に渡る研究開発から、γ-オリザノール、トコフェロール、トコトリエノール、ステロール、フェルラ酸、スクワラン、γ-アミノ酪酸及びセラミド等数多くの有効成分が発見されて来ました。これらはすでに医薬品、機能性食品、健康食品、食品添加物、化粧品用素材として、広い分野で応用されています。これまでの効率化優先の製造法を見直し、他の成分(グルコシルセラミド、エルゴステロールパーオキシド、フェルラ酸、ホスホセリン、システイン等)を同時に生成するように工夫されたものが米胚芽発酵抽出物です。酵素製剤で加水分解するのではなく麹菌による固体培養で製造されています。その為に手間と時間がかかりますが、日本の伝統的発酵手法を活かしたとも言えます。一般食品と異なり味見などで品質を確認できませんので、最適な発酵段階を米由来ポリフェノールの生成量を指標として確認しています。
 
また、以前のヘミセルロース誘導体の研究では極微量で存在を確認できなかった植物共生菌由来の糖脂質(LPSまたはグリコリピド)が活性に関与していることが分かってきました。比較的に低分子でミリグラム単位ではなくマイクロ・ナノグラム単位の量で活性を有していたためです。またこの成分は世界的な免疫研究の権威である大阪大学微生物病研究所 生体防御研究部門 自然免疫学分野 審良静男医学博士の研究により、ワクチンのアジュバント(免疫補助剤)として有効であると評価されて医薬品への応用試験が行われています。最新ARABIXは米胚芽発酵抽出物に、品質を担保出来る量の米糠発酵抽出物由来の糖脂質を配合した複合原料素材です。これは個人によって異なる免疫細胞のレセプター感受性に左右されず、機能性成分同士の相乗作用を意図したものです。これまでのヘミセルロース誘導体中心のものと比べて1種類の成分に頼らず、幅広く対応が出来る事を期待したものと言えます。

医療機関専用BRM-ARABIX for Medical Doctors